2013年1月26日土曜日

夫婦である前にカップル。




スウェーデンの長くて寒くて暗い冬。

午後3時には街は暗くなり、外出の準備ができたくらいに、外に出ようという気持ちをくじこうとする。

スウェーデンの人は夏が好き。

冬の夜の長さとは対照的に、夏の太陽の出ている時間は長い。

夜の23時まで太陽が出ていると聞かされたけど、僕からしたらそんな一日中活動出来たら、

へとへとに疲れてしまいそうだ。

「夏のない一年は、恋をしない一生。」そんなことわざがスウェーデンにはある。

厳しい冬が、夏を恋しくさせる。

また人生の別の機会で、スウェーデンの日が沈まない夏を尋ねたい。


でも、冬の気分が沈みそうな空や暗さにも太陽があった。それは街のショーウィンドウに、各家庭の窓辺に。

スウェーデンの家やアパートの多くの窓辺に飾られている多様な種類のキャンドルや星形のライト。

カーテンが閉められている窓などほとんどなく、窓枠から家の中と外の街を、暗い夜道を照らす。

東京の街灯の明かりだけが夜道を照らす様子を思い浮かべると、寂しさと息が詰まる気がした。


お世話になったグスタフのママと、ペペさん。

「あなたはゲストだから。」っていう言葉にそわそわして、

「冷蔵庫のものは好きに食べていいのよ。」って言葉に、アメリカのドラマみたい!と感じ、

作ってくれたママの自慢の料理は美味しすぎて、でもナイフとフォークに慣れなくて、

はじめは素直に受け止められなかったけど、遠慮ばっかりしてしまったけど、

慣れてきたらおかわりもさせてもらったし、席について食べる夕食がいつも楽しみだった。


スウェーデン出国を控えた最後の週末。

普段いるマンションとは別にちょっと田舎に移動したところのお家へ移動。


冬の寒さで凍り付くストックホルムの入り江。

凍った入り江でスケートをしてる子供が遠くに見え、それと一緒に走り回ってる犬が見えた。

厳しい寒さがくれるちょっとした贈り物。僕もおそるおそる氷の上を歩いてみた。

割れるか割れないか、一歩ずつ確かめながら。

でも実は走り出したい気持ちを抑えるのに必死だった。胸が躍った。


冷えた身体を温かい素敵な家が迎えてくれる。

黄色や明るい青に塗られた家は白一面の外の世界にとてもよく映えた。

そんな素敵な家々を眺めたが、家の中はそれ以上に、息をのんでしまう程に素敵だった。


 暖炉に薪がくべられ、パチパチっと音を出して燃える。炭になって崩れる音。

薪を継ぎ足す手間は、この独特の温かさを感じる為ならば厭わない。


グスタフのお母さんが料理を作り出した。さあ今晩の夕食はなんでしょう?

トントントン。野菜が心地よい音を立てて切られていく音がする。

 本当に本当に料理が上手でおいしくて、「料理が得意なんですね!」って言ったら、

「料理をするのが好きなだけよ。」だって。

胃袋で男性の心をつかむってのは本当にあると実感した。


そして将来の僕の奥さんに、"料理上手"より"料理好き"であればいいなと願う。

料理の作る途中や出来に、人の性格も出ると思う。料理をする事はいろんな意味で自分磨き。

 何はともあれ、"料理にかける時間を労力と手間だと思わずに楽しめる人は素敵だ"。

例え、はじめが下手くそでも絶対にうまくなれる。

そのモチベーションを保たせるようにするのが、きっと夫になる僕の役目。

料理を作ってくれたお礼に、お皿洗いは引き受けよう。

手間がかかる料理なら、ふたりで実験するみたいにドキドキしながら出来上がりを待とう。

美味しい料理を口にもぐもぐさせながら、ちょっとくらい下品でも楽しい会話をしながら食べよう。


ペペさんはとってもグスタフのお母さんの料理を褒める。

嫌みもためらいもなく、ストレートに自然に。

「今日の料理も美味しかった。」「素晴らしいね。」

 僕もそんな言葉を心からかけられるような人になりたい。

そんな夫婦になりたい。きっとなってみせる。


 夕食がすんだ後の午後の夜9時頃。ぺぺさんとママが出かけてくると言った。

「どこへ行くの?」と尋ねると「映画を見に行くの。」と。

そのとき、軽く胸をポンッと押された気がした。

"夫婦"という言葉は"親"の意味合いよりも先に"カップル"である。

日本人はもう少し、それを意識してあげるといいかもしれない。

そんなことに気づかされたスウェーデンのとある夜でした。



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