2012年9月10日月曜日

「市川、警察に捕まったってよ。」

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「市川、警察に捕まったってよ。」


「桐島、部活やめたってよ。」朝井リョウさんのその本を読んでもう2年経つ。

月日が流れるのは本当に早い。


バンビエンの街にはオートバイクレンタルがある。

海外の観光地にはよくあり、無免許または国際免許証がなくても貸してくれることを僕は知っていた。

そう、僕は無免許。

20歳になりながらも"盗んだバイクで走り出すこと"にほんのちょっと憧れがあった自分の悪ガキ心を抑えられなかった。

ちなみにバイクはちゃんと借りましたし、尾崎豊は特に好きではないです。。。

ふたりでバイク一台を借りた。

諸江は免許も持ってるし、車も持ってる。バイクも運転したことあるそう。

そんな信頼も、一度目のターンで転んだのを見た時からもろく崩れ去った。

レンタルバイク屋の主人は僕らを心配そうに見つめる。無理もない。

ぼくもドキドキですから。

道は直線がほとんどなのでそんなに危険はない。

諸江がひと通り乗り慣れた後で、今度は僕が前にまたがり運転する。肩に力が入る。手に汗を握った。

クラッチを噛ませて、アクセルをびびりながらひねる。バイクが走り出した。

エンストの原理を自動車整備の学校に通っている友達から教えてもらっていたからか、

なぜかマニュアル車もエンストなしに動かせる。道は走れないけど。

気分を例えるなら、"水曜どうでしょう"

カーブも難なくこなした。テンションがあがる。肩の力はまだ抜けないけど。

慣れてくるにつれ、視界も広がってきた。からだが風を切る。


以前は地元の友達が語る、バイク気持ちよさを想像していただけだった。

昔付き合った人が語るツーリングに想いを馳せただけだった。

いまはそこに比べたらまだまだだろうけど、ちょっと近づけた気がする。


いくらかっこいいことを並べても、これはいけないことだけどね。

諸江と交代し、ガソリンを入れに街の外れに向かう。そこで事件は起こった。

ラオス警察が張り込みをしていて、まるでドライブスルーのようにきれいに脇道に案内される。

10人くらいの警察官がいるところに丁寧に案内され、椅子に腰掛ける。

警察「きみたちは何人だい?」

僕「日本人です。」

警察「免許証はあるか?」

諸江「ゲストハウスにあります。」

警察「じゃあ、取って来て。その間きみは人質ね。」

僕「ぼく人質ですか?」

警察「きみは彼の友達でしょう。」


まさにこれは"走れ、メロス"状態。

僕は免許持ってなかったし、その時は運転もしてなかったから一応無罪?

気まずい雰囲気を作らないために英語で話しかける。

"仲良くなる作戦"

僕「おすすめの場所どこ?」

警察「ジム。からだを鍛えるんだ。お前もやったほうがいいぞ。」

この大自然に囲まれた土地のおすすめスポットはまさかのスポーツジム。

その発言に言葉が詰まった。そう、警察は強くないと。

僕「僕も強くなったほうがいいよね!」

その後は、バンビエンの街をほめ、自然をほめ、髪型をほめた。

そこで表情が曇ったので話題を変える。

日本の写真をたくさん見せた。カメラで写真撮っててよかった。

日本のお寺、紫陽花、さくら。こころがほぐれますようにと、花の写真を選んだ。

警察「おお、さくら!きれいだ。」さくらは偉大。さくらだいすき。




"メロス"が帰ってきた。手には日本の免許証。よく持ってた。

警察同士がしばらく話し合う。一秒一秒が長く感じられる。

警官たちの表情ひとつひとつの動きに気持ちが揺れる。






結局、僕らは注意を受けただけで、ヘルメットをかぶるように指示され釈放された。

そう釈放された。特に罰金もなしである。

何が良くて何が悪いか。

また街を走りだすと、同じタイミングでバンビエンに来た日本人学生ひとりが街を歩いていた。

腕や脚の至る所にガーゼが張られてある。痛々しい。昨日、バイクに乗っていた日本人だ。

警察がいなかったから、注意を受けなかった彼ら。

警察に引き止められた僕ら。何が幸運かは状況によって変わる。


バイク事故。

海外でバイクレンタルする人は多い。そして、事故も。

からだに怪我はなくても悪路で滑ってバイクを壊してしまったりする。

カオサンでお世話になったハナもバイクの修理代に3万払っていた。

ぼくらは彼にバンコクの病院を紹介し、一歩一歩進むその後ろ姿を見送った。

国際免許証を持っていない場合は、海外傷害保険もおりない。事の重大さに改めて気づかされる。


事故で、罰金を払って、怪我をして、旅本来の目的を果たせなくなった時の後悔は。。。


事故の生々しさを目の当たりにして、もはや事故を知る前のハンドルさばきは僕らにはできなくなっていた。

時間も燃料も残っているが、僕らは夕日の沈む前にバイクを降りた。

バイク運転の入り口からドアを開け、ちょっと踏み込んで中を眺めた僕ら。

バイクを運転することの楽しさと、怖さを目の前に突きつけられた。

胸をガツンと殴られた感覚が忘れられない。



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