2012年10月21日日曜日

ガンガーで燃えて、別れる。

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朝早く目覚め、ガンジスの畔を船で巡る。仲良くなったイギリス人も同行した。

「船に乗らないか」と声をかけてきたボートマンがガイド役も担う。

ボートは岸からだいぶ離れて、まだ僕はガンガーの水に触れていない、と気づく。

手を伸ばせばすぐそこに流れる水がある。

「とても汚いからやめなさい。」イギリス人のクリスタルが言う。

するとガイドが反発するように言った。

「ガンガーの川の端の水は汚いが、中心を流れる水は汚くないんだ。」

「試してみなさい、ガンガーの水と売っている水を容器に入れて1年保存すると先にだめになるのは売っている水のほうなんだぞ。」

子供の頃からこの川のそばで育った彼はガンガーに対してたくさんの知識を持っていた。

「最近起きた洪水は。。。」途切れることなく彼は語った。

途切れなく訪れる旅行者に、何度も繰り返し言い聞かせてきたであろうそのお話。

しかし、彼の口から出てくる言葉はまるで話したがっているように軽快だった。

気を使ってくれていたのかもしれないが、英語の説明も問題なく聞き取れた。

きっと彼はこの仕事を"やらされているのではない"と感じた。

船を降りた後、お代の80ルピーを渡す時が来た時に僕とクリスタルはおなじことを考えていた。

結局僕らはふたりとも、彼に100ルピーずつ支払った。

それを彼に払うに値するほどの充分な価値ある時間だった。

夕日のような朝陽が登る。ガンガーの朝陽の色はとても強いオレンジ色。

片方の岸にはゲストハウスや居住区がひろがるのに、対岸にはほとんど手がつけられず、

人はほとんど住んでいないようだった。

昔から暗黙のうちに守られてきたルール。

あの向こう岸は"死後の世界"を意味するときいた。

仏教の三途の川をへだてたあの世とこの世の関係と同じらしい。

オレンジ色の朝陽に照らされて霞むそのシルエットは確かに神聖なものを感じさせた。


 遠くから訪れたインド人も朝陽の雰囲気に見とれてガンガーを見渡す。



ガンガーで燃えて、別れる。

朝の時間帯、船からは火葬場の写真を撮ることが許された。僕はこの火葬場に何度か足を運んだ。

なにがそうさせたかは自分でもよくわかっていない。

はじめの一回は、見ておこうという気持ちからだがその後はなぜだろう。

家族がガンガーの水で遺体を清め、ヒンドゥー教の神シヴァの炎でその身を焼く。

3500年炊かれ続けられているというその火、そして昼夜問わず繰り返されるこの火葬の儀式。

バラナシの朝の道路はインド各地から火葬を行おうという家族とその亡くなった者の遺体が列を作る。

一日に200体から300体の遺体が火葬されると説明を受けた。

火葬には高いお金がかかった。人間のからだはそう簡単に燃え尽きない。臭いもでる。

それらを防ぐためにも燃えやすい木と臭いを防ぐ粉に費用が充てられた。

その費用は、結婚と火葬がインド人の人生で一番お金がかかると言われるほどだ。



僕はある家族の火葬の様子をすこし離れたところから眺めた。

おじいさんの火葬であったと思う。娘さんは場所もはばからず大きな声で泣いていた。

亡くなったおじいさんの遺体をガンガーの水で洗い、罪を流す。

組まれた木の上にそっと遺体がのせられたとき、すこし離れたところに娘さんはいた。

火葬場では泣いてはいけないから、女性は入れない。

息子と思われる人がシヴァの火を受け取り、遺体の周りを5回廻る。

人間の五体が無事、天国に行けるように想いを込めて。

そして、そっと組みたてられた木の下部に火をともした。

煙に包まれた後、一気にからだが炎に包まれていく。



ここに来る前は、残酷すぎてみれないんじゃないかと思っていた。

しかし、実際に見てみると遺体は炎の中で静かに眠っているように見えた。

その顔も見ることが出来たが表情は穏やかだった。


僕はもともと母方のおばあちゃんと父方のおじいちゃんしかいなかった。

末っ子であった僕はとてもかわいがってもらえていたとおもう。

しかし、小学4年の頃におじいちゃんと中学1年の頃におばあちゃんと別れがあった。

小学校6年の頃には同級生の死もあった。幼くして火葬を何度か経験していたのだ。

その際に何度も何度もコップに入れた水を運んだことを覚えている。

親に「なかはとっても暑いから、お水をあげてね。」という言葉がその時は辛かった。

いま眠るように炎に包まれる姿を見て、

「おじいちゃんおばあちゃんもこうだったのかな。」

昔の嫌な記憶がすこし軽くなった気がした。

"ガンガーはすべてをくれる。" 

最後にボートマンがそうつぶやいた。

川岸の寝床、食事、仕事、洗濯、お風呂、祈る場。。。。

ガンガー周辺では法律とは別の、昔から変わらないルールが守られている。

それがある種、このバラナシのゆるい雰囲気をつくっていると言える。

絶え間ないガンガーの流れのように、引き継がれているものが多くこの地にあった。



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その仕事を選んだのかどうかはわからない

でも、その仕事をやる姿は輝いていた

それはその自分の仕事の中に宝物を持っているから

職業が違っても働くことの本質は変わらない

その姿から学べることがあった

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